松あき子の部屋

私が観た日本の伝統芸能・工芸品などを書きとめます。

TTR能プロジェクト2014公演 〜善知鳥(うとう)〜

TTR能プロジェクト」をご存知でしょうか?囃子方の成田達志さん(小鼓方)と山本哲也さん(大鼓方)が結成されたユニットで、お能を広く気軽に楽しめるようにプロデュース活動をされています。“門閥や所属地域を超えた実力主義による”キャスティングや魅力的な選曲を行い、普段ではなかなかお目にかかれないような贅沢な舞台を見せて下さいます。私も毎回ではありませんが、可能な限り伺っています。昨年の梅若玄祥さんによる生き生きとした『卒塔婆小町』は今でも深く印象に残っています。今年の曲は『善知鳥』でした。生活の為に鳥を殺して家族を養っていた猟師が、その狩猟方法の残虐性から地獄に落ち、毎日その鳥に目をえぐられ肉を裂かれるという苦しみを受け、自分の子供に近づく事も許されない。その苦しみから救ってくれと地獄から現れ出るが、結局成仏はできないという、全く救いのないお話。。今の私には重過ぎる主題でした。でも、それなりに楽しみ方はあるのです。お能の優れた所の一つは舞台の使い方です。通常の芝居のように大道具や背景セットなどがありませんから、役者達の所作などで舞台転換していきます。今回も舞台上にあの世とこの世が現れてゆらゆらとしておりました。

f:id:matsuakiko:20140902012645j:plain

お能の表現力はいつも凄いなと思います。無駄が削がれていて、道具を使ったりしないので、動きそのものがフォーカスされると言うか、役者がこう演じてるんやなという動きではないのです。猟師が親鳥の鳴き真似をして子鳥を殺す場面や、地獄で化鳥が血の涙を降らしながら飛び交う様、目をえぐられる苦しさなど、今その場で実際に起きている事として現れてきます。あまりに怖かったので、時々を目をグッと閉じて聞いていました。(そして時々起きていました。。。)

 

今回はプレ勉強会にて河村晴道先生のお話を伺ったり、舞台に上がって目をえぐられる所作を教えて頂いたりしました。この時伺った日舞と西洋の踊りの違いがとても面白かったのです。私はずっとバレエを習っていたので、とても納得でした!最近、舞踊などもよく拝見するので日舞にもとても興味があります。いつか祖父もやっていたお能の仕舞を私もやりたいと思っています。河村先生のお話はまたいつかご紹介しますね。

 

f:id:matsuakiko:20140902012806j:plain

所で、成田先生と山本先生は一般人に向けて鼓の体験教室などもしておられます。以前、私も申し込んだことがあるのですが、生憎の体調不良で欠席をしました。すると次回のお稽古の前に、少し教えてあげるよお申し出下さったのです。なんと!!丁寧で優しい方だなあと嬉しかったです。(結局インフルエンザで次回も欠席したのですが・・・)お能の囃子は独特の旋律で、あの笛の音が聞こえてくるとゾクゾクっと興奮します。時間の軸を超えて、地上のボーダーも超えた空間へトリップできるのがたまらないお能の魅力です。現世にいると忘れたいこともありますでしょう?お能を観ると、不思議とすっきりして現実に戻って来られる、そう思います。(あ、曲にもよるかもしれませんが。)皆様もご一緒にいかがですか?