松あき子の部屋

私が観た日本の伝統芸能・工芸品などを書きとめます。

義太夫三味線発表会

先日無事に義太夫の発表会を終える事ができました。100名様定員の会場に95名様もお越し下さりました。当日のお客様も多く来て下さって一同感激でした。私は開幕トップバッターで弾くという役割でした。ちゃんと弾けるかなというより、口上の「とざいと〜ざーい(東西)」の後、間延びしないように三味線を構えて撥を握りまず一の糸をたたく、という事に全てをかけたと言っても過言ではありません。そこでスカッと音が出なかったり、緊張のあまり萎縮してしまったら会の全てが決まってしまうような気がして、嘘でもいいから堂々と余裕のあるふりをしようと、もうそれだけでした。幕が開いてライトの眩しさの中にお客様のお顔を拝見して、何とも言えない緊張感と高揚感とを味わいました。友人や後輩が来てくれていたのですが、その顔を見つけた時は本当に嬉しかったです。

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担当した最初のパートは『菅原伝授手習鑑 寺入りの段』の冒頭部分、たった4分程。無事一の音を叩き、大夫さんの語りが始まり出すともう止まる事はできません。最初は夢中で全く記憶がないのですが、ハタと冷静になる瞬間があるのですね。他人事のように「うわっ、語りと三味線、全然合うてへんやん」と感じまして、一瞬手が止まってしまいまして。。しかし我ながら落ち着いたもんで、ちゃんと途中からキャッチアップできました!その後は何とか弾ききる事ができました。私も緊張したけど、見ていた友人はもっと緊張したみたいです。そうでしょうね。。。二曲目は『新版歌祭文 野崎村の段』、錦糸師匠のツレを6名で行いました。皆が口々に「皆がいるからエア三味線でもばれへんな」と言っていたのですが、練習でどうしてもタイミングの合わなかった部分は全員が出遅れエア状態に。結局誰も弾いていない、から「こういう曲か」と思われて、ばれていない?なんていう言い訳を終わってから互いにし合っていたのでした。えぇ、ばれていますとも!

 

今回は自分の事だけで必死になって終わってしまったのですが、沢山勉強する事ができました。無事に幕を降ろすまで、舞台裏では本当に多くの力が必要です。お弁当やゴミ回収の手配、受付準備、客席・舞台設営、影アナや口上、着付け手伝い・・・・三味線の糸換えや調子合わせだけでも大仕事です。自分の三味線だけが上手に弾ければそれで舞台が成り立つ訳ではありません。次はもっと役にたてるようになりたいです。しかし義太夫の会では裏方さん達舞台に出ない方も黒紋付で作業をします。それがなんとも良かったです、心が一つになる感じで。舞台に出る前後の師匠へのご挨拶の仕方なども教わりました。そして人生初の裃!着用時の注意点(肩衣がぶつかるので、とにかく蟹歩き!)や仕舞い方も、一度では覚えられまんでしたが!!次の目標は袴は自分で着用できるようになる事です。

 

しかし皆で一つの舞台を作り上げる達成感は、他に変えがたい何かがあります。これを味わってしまうとやはり、またやりたいと思います。大変なんだけど、次はもう少し出来る事を増やしたい。今回は全く全体を見ることができず(隣の大夫さんの語りさえ聞こえていないのですから当然)、おんぶにだっこで終わってしまいましたが、それでも楽しく挑戦することができて合格かなと思います。これからも「やってみる」気持ちと勇気を忘れずに挑戦していきたいです、何にでも”初めて”が存在するのですから。

 

今回のプログラム

『菅原伝授手習鑑』 寺入りの段

仮名手本忠臣蔵』 裏門の段

『新版歌祭文』 野崎村の段

『絵本太功記』 尼崎の段