松あき子の部屋

私が観た日本の伝統芸能・工芸品などを書きとめます。

踊る、ということ

人はなぜ踊るのか?私は3歳頃からクラシックバレエを習っていましたので、自我が芽生えた頃には週に3日4日お稽古へ行くのが当たり前の毎日でした。なぜバレエを習っているのかなんて考えた事もありません、気が付けばやっていましたから。今はもう辞めていますが、おかげで、踊りを習う事は大好きです。日本舞踊以外はほぼ一通り体験も含めてやってみました。西洋のダンスはバレエが基礎ですから、何となくできるものです。ただアルゼンチンタンゴのように男性とべったりと組むダンスはなかなかリードされる感覚を掴むのが難しかったです。

 

先日のお能の会で河村晴道先生から西洋のダンスと日本の舞踊の違いについて少し伺いました。根本の違いは自然に対する考え方の相違からきている、というお話でした。西洋では厳しい自然環境の中で、人々はその自然をコントロールしようとする事で生活を切開いてきたけれども、一方の日本では、自然と共に歩み敬いながら生きてきたという所に大きな違いがあるのだと。バレエでは上へ上へと跳んだり、トウシューズで回転したり足をあげたりと、大地から離れて跳躍するという形をとりますが、日本舞踊や仕舞では摺り足にも見られるように、大地との融合や一体化を目指している形となるのですね。重力に逆らうのではなく、それを感じながら舞う。こうした違いは舞踊だけではなく、宗教や国の成り立ちにも現れているのでしょう。

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(祖父が謡や仕舞のお稽古で使用していた扇です。)

 

日本では古来、舞踊は神に捧げる、又、神と一体化を目指すために行われていたと聞いています。農作物を豊富に実らせてくれるのは自然である神ですから、雨乞いをしたり、太陽を求めたりする為に、神様のご機嫌伺いに踊ったり歌ったりしていたのでしょう。そこから美しさを追求したり、舞踊の技術が継承されたりするようになり、プロ集団みたいな人たちが現れてきた。かつては将軍達も愛し庇護をしたし、大衆の人々も熱狂し楽しむようになった。日本の舞踊の形には独特の美しさがあるなと思いますが、自然や神との融合を目指す現れだったのかと思うと、改めて感じ入るものがあります。憤怒の表現というのがありますけど、これは感情的な怒りではなく、地球の奥底から沸き上がってくるエネルギーのようなものを表したいのだと仰った能楽師の方がいました。面白いですね。

 

日本の舞踊はまだ未体験ですので是非きちんとお稽古してみたいと思っています。少し勇気がいるけれど、まだ体験講座しか行っていない仕舞とか。。。幼稚園時代に習っていたバレエの先生は日舞も素晴らしい先生で、黒紋付袴姿で美しく舞っていた舞台を今でも覚えています。自然や日本の神々様の息吹を少しでも感じられるように、、日本の舞踊は奥が深いですね。