松あき子の部屋

私が観た日本の伝統芸能・工芸品などを書きとめます。

襲名披露 染弥改メ 三代目林家 菊丸

秋晴れの美しい9月27日、三代目林家菊丸さんの襲名披露大阪公演が行われました。開場前のロビーは贈られたお花やのぼり旗で彩られて大変賑やか、お客の熱気もすでに高まっていました。口上には笑福亭仁鶴師匠、桂文枝師匠や米團治さん、林家染丸師匠方々が並ばれ華やかでした。115年ぶりの大名跡を継がれたと言っても、三代目菊丸さんは今年40歳とまだお若いので、ベテランの師匠方が揃って、お客様のお力添えで大輪の菊を咲かしてほしいと述べておられたのが印象的でした。文枝師匠はこれからの時期、全国各地で開かれる菊祭りのお話を引き合いに、勝ち菊を育てる為にどれだけの時間と努力が必要であるかを話されました。三代目菊丸という菊の花がどんな風に花開くのか本当に楽しみです。 

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その菊丸さんの最初の一席は「子は鎹」でした。人情噺は染弥さん時代から、’らしさ’が感じられてとても好きです。染丸師匠も菊丸さんのことを、根が優しいと仰っていますが、そういう噺家さんの人となりが出てくるのが人情噺やないかなと思います。以前、鶴瓶師匠の子は鎹を聞いた時には、どっしりした父親の愛情や寂しさが印象深かったのですが、菊丸さんの子は鎹は、子供の素直さや明るさがとても印象的でさわやかな気分になりました。

 

「芸は人なり」と、菊丸さんはいつもサインに添えて書かれます。喋る技術が身について、どんなに演じるのが旨くなっても、芸を通して必ずその人そのものが表れるからでしょう。高座に上がってお客様と対面する時、その真剣勝負の場で嘘はつけないものだと思います。芸にはやはり、技術を超えた何かがありますよね。どれだけ真摯に自己を見つめお稽古を重ねてきたのか、その結晶が芸人の舞台だと思います。コツコツと努力を重ねると必ず大きな結果に結びつく、それを見せてくれているのが菊丸さんの高座やと思いました。菊の花言葉は高潔や誠実。雨や台風にうたれても野太く咲きながら、秋空に堂々と香り立つ凛とした菊の花のように、三代目菊丸さんもまた大輪に開くよう私も微力ながら応援したいなと思いました。菊丸さん、襲名本当におめでとうございます!!

 

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(三代目菊丸の紋、「乱菊」。菊丸の名跡は師匠染丸の師匠筋にあたる為、定紋を新たにされたそうです。)