松あき子の部屋

私が観た日本の伝統芸能・工芸品などを書きとめます。

芭蕉布展

職場近くで平良敏子さんの芭蕉布展が開催されており行って参りました。名前は知っていましたが実物を拝見するのは初めて。なんとも素朴で優しい雰囲気の反物がずらっと並んでいました。手に取ることはできませんでしたが、着ると風が抜けて涼しいのだそうです。沖縄で織られる布ですからね。しかし芭蕉というのは何だ?と思っていました。原料となる糸芭蕉という植物のことなんですね。私達には身近なバナナの木の仲間だそうです。糸芭蕉は実をつけますがそれは食されず、他に実をつける実芭蕉や花芭蕉があるそうです。会場には、糸芭蕉の幹の皮を剥いで、繊維を取り、煮て乾燥させた状態のもの(いわゆるウービキの状態)が展示されていました。それが非常に不思議で、ここからどうすればこの反物になるんだ?一体、これをどうやって機織りするのだ?と疑問でした。まず糸を紡ぐまでにもたくさんの工程があります。1本の糸芭蕉から取れる糸の量はわずか、一反を織るのに、200から300本もの糸芭蕉の木を使うそうです。気が遠くなります。

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写真の檀ふみさんが着ておられるのが芭蕉布の着物です。美しいですよね。サラッとした印象で決して派手ではないのですが、ずっと心に残るような人の手の感触のあるような、そんな布ですね。今では織り手も少ないそうです。私が拝見した平良さんは若い頃に「自分が遺さなければ」との使命感にかられて、この布に人生を捧げてこられた方です。戦争中は米軍が糸芭蕉の畑を焼き尽くしてしまったそうです。3年かけてようやく繊維をとることができる糸芭蕉を一から育て慈しみ、機を織ってこられたんですね。本当に大変な作業だと想像します。

 

今では着る方も少ないのではないでしょうか。今回の展示会では、反物の値段は不明でした!恐らく私の想像を超えた高価なものなのではないかなと推測します。しかし着る方がいなければ、この後どうやって芭蕉布は継承されていくんでしょう。こうした伝統の品々は、芭蕉布に限らず、生活の中で大切に使われ続けることで命を輝かせるものではないかと思います。でもある所にはあるんでしょうから、私が心配する必要もないんでしょうね。。かつては一般庶民も着ていたという芭蕉布の着物、私もいつか袖を通してみたいなあ。どんな着心地がするのか。糸芭蕉の木にすっぽり抱え込まれるような温もりが感じられるのかな。