松あき子の部屋

私が観た日本の伝統芸能・工芸品などを書きとめます。

初めてのお茶屋さん遊び

先日、都をどり義太夫三味線の雛文師匠が出られているので、仲間達と行って参りました。お茶を頂いてからゆっくり、華やかな舞台を堪能して来ました。師匠は「源頼光土蜘蛛討」に出ておられました。芸妓さん達の描く土蜘蛛は上品ですね。おどろおどろしい三味線の音も効果的で楽しめました。「新口村雪道行」、いわゆる梅川忠兵衛が見られたのも良かったです。この日のお楽しみは舞台の後にも待っていました。義太夫仲間の一人がお茶屋さんへ連れて行ってくれました。舞妓ちゃんをお二方も呼んで下さって。夢の時間を遊んできました。

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午後6時から席が始まりまして、舞妓の雛佑ちゃんと富久春(ふくはる)ちゃんのお酌で食事が進みました。雛佑ちゃん(写真の左の方)は店出し一ヶ月とのことで、とっても初々しいチャーミングな舞妓ちゃんでした。一同は一瞬で虜になってしまって、少しでも長く話しをしたいと質問攻めにしてしまいました。まだ舞妓修行も半年程だそうですが、美しい所作や細やかな気遣いなどは流石の一言です。まだ十代とは言えプロフェッショナルです。分からない事は分からないと言える素直さもサービス精神やな、とか完全に舞い上がった気分で思っていました。

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食後はお座敷で一緒に遊びました。金毘羅船船をやろうというので、お茶屋のお母さんが細を弾いて下さって、一同これまた熱狂して盛り上がりました。♪こんぴらふねふね しゅらしゅしゅしゅ〜♫とよく知られてますよね。単純な遊びなんですけど、これがなかなかややこしい。雛佑ちゃんに皆負けていたのですが、「姉さんなんか強そうやわぁ」の言葉通り、16歳を相手に私が本気でかかりまして、唯一勝利致しました。ありがとう、雛佑ちゃん。。。

 

この後も別のお座敷があるとの事で、午後8時過ぎ、予定より少し時間を過ぎて二人は次へ行かれました。中学生の頃、私も舞妓さんに憧れていて夢見た時期もあったんです。その道に進んでいたらどうしていたのかなぁ。でも話を聞いていたら大変。華やかな世界の裏側はいつも涙ぐましい鍛錬の連続ですよね。彼女達の年代特有の、あの一瞬の煌めきの美しさや切なさみたいなものに酔いしれました。

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そして素晴らしかったのはこのお茶屋の93歳のお母さんです。元々藝ごとが好きで、女義太夫もしておられた方、三味線を弾く姿もとっても粋。2年程前に太棹は辞めたと仰ってましたが、90代でまだ義太夫を弾いておられたんですね。すごいと思います。私も90代で現役で仕事をしていたいなと思います。自分の好きな事をしてそれが仕事になり、人のためになる。それを93歳というお年で継続しておられるなんて本当に憧れます。こんなかっこいい女性に出会えた事もこの日の大きな収穫でした。これからも全力で自分の好きな事をやっていきます!!!!

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日本の四季、いろいろ

しばらくぶりです。もう立夏ですね。あっという間に風薫る季節を向かえました。ゴールデンウィークは仕事なんですが、今日はお休みでゆっくりできました。ほんまに行楽日和のえぇ天気でしたね。今年は近所に自生する藤の木がものすごい勢いで花を咲かせていて、毎朝藤色に輝く姿を見るのが楽しみです。藤色って本当に奇麗ですね。とても神秘的で、夕暮れ時にそばを通ると怪しげで近寄りがたい雰囲気でもあります。我が家の庭も花盛りで賑やかです。七十二候の牡丹華(ぼたんはなさく)の通り、紅色の大輪がそろそろ朽ちようとしています。それでもハッとする美しさに感動します。

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今日はお花の目線に合わせて撮ってみました。まっすぐ空を向いて咲いている彼らの視点で見上げると、とてもすっきりした気分です。

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もっこうバラも最盛期。

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百花の王、牡丹。

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野生の藤の木はダイナミックで、強い生命力を感じます。実際、とても強い木だそうですね。藤棚など、手入れされた藤の花は繊細な印象ですけど。

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この藤色の美しさに完全に心を奪われました。憧れすら感じるほど。。こんな色の着物をシャッと着てみたいです。

今年の夏も暑くなりそうですね。温暖化や異常気象と言われながらも、美しい花を咲かせてくれるので、四季折々を楽しみたいです。

 

 

義太夫三味線発表会

先日無事に義太夫の発表会を終える事ができました。100名様定員の会場に95名様もお越し下さりました。当日のお客様も多く来て下さって一同感激でした。私は開幕トップバッターで弾くという役割でした。ちゃんと弾けるかなというより、口上の「とざいと〜ざーい(東西)」の後、間延びしないように三味線を構えて撥を握りまず一の糸をたたく、という事に全てをかけたと言っても過言ではありません。そこでスカッと音が出なかったり、緊張のあまり萎縮してしまったら会の全てが決まってしまうような気がして、嘘でもいいから堂々と余裕のあるふりをしようと、もうそれだけでした。幕が開いてライトの眩しさの中にお客様のお顔を拝見して、何とも言えない緊張感と高揚感とを味わいました。友人や後輩が来てくれていたのですが、その顔を見つけた時は本当に嬉しかったです。

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担当した最初のパートは『菅原伝授手習鑑 寺入りの段』の冒頭部分、たった4分程。無事一の音を叩き、大夫さんの語りが始まり出すともう止まる事はできません。最初は夢中で全く記憶がないのですが、ハタと冷静になる瞬間があるのですね。他人事のように「うわっ、語りと三味線、全然合うてへんやん」と感じまして、一瞬手が止まってしまいまして。。しかし我ながら落ち着いたもんで、ちゃんと途中からキャッチアップできました!その後は何とか弾ききる事ができました。私も緊張したけど、見ていた友人はもっと緊張したみたいです。そうでしょうね。。。二曲目は『新版歌祭文 野崎村の段』、錦糸師匠のツレを6名で行いました。皆が口々に「皆がいるからエア三味線でもばれへんな」と言っていたのですが、練習でどうしてもタイミングの合わなかった部分は全員が出遅れエア状態に。結局誰も弾いていない、から「こういう曲か」と思われて、ばれていない?なんていう言い訳を終わってから互いにし合っていたのでした。えぇ、ばれていますとも!

 

今回は自分の事だけで必死になって終わってしまったのですが、沢山勉強する事ができました。無事に幕を降ろすまで、舞台裏では本当に多くの力が必要です。お弁当やゴミ回収の手配、受付準備、客席・舞台設営、影アナや口上、着付け手伝い・・・・三味線の糸換えや調子合わせだけでも大仕事です。自分の三味線だけが上手に弾ければそれで舞台が成り立つ訳ではありません。次はもっと役にたてるようになりたいです。しかし義太夫の会では裏方さん達舞台に出ない方も黒紋付で作業をします。それがなんとも良かったです、心が一つになる感じで。舞台に出る前後の師匠へのご挨拶の仕方なども教わりました。そして人生初の裃!着用時の注意点(肩衣がぶつかるので、とにかく蟹歩き!)や仕舞い方も、一度では覚えられまんでしたが!!次の目標は袴は自分で着用できるようになる事です。

 

しかし皆で一つの舞台を作り上げる達成感は、他に変えがたい何かがあります。これを味わってしまうとやはり、またやりたいと思います。大変なんだけど、次はもう少し出来る事を増やしたい。今回は全く全体を見ることができず(隣の大夫さんの語りさえ聞こえていないのですから当然)、おんぶにだっこで終わってしまいましたが、それでも楽しく挑戦することができて合格かなと思います。これからも「やってみる」気持ちと勇気を忘れずに挑戦していきたいです、何にでも”初めて”が存在するのですから。

 

今回のプログラム

『菅原伝授手習鑑』 寺入りの段

仮名手本忠臣蔵』 裏門の段

『新版歌祭文』 野崎村の段

『絵本太功記』 尼崎の段

 

 

義太夫三味線発表会へ向けて 三

いよいよ義太夫発表会の本番まで2週間をきってしまいました。冬休みはとにかく毎日お稽古をしましたので、なんとか、寺入りの語りは一緒に語れるようになりました。三味線の手の部分はばちばちと小さな扇子を叩きながら、一緒に声をだして毎日練習していました。少し覚えてくると面白いので気分ものってくるもんです。しかし、三味線で弾こうとするとなかなかスムーズにはいきません。やはり基本の撥打ちがしっかりと固まって身についていないと出来ません。基本の重要性を一年経てようやく実感している所です。。。どうしても弾く事が大事やと思いがちですが、違うんですね。師匠が日頃から仰る「弾こうとするな」の意味がようやく分かりました。今回、それがどこまで間に合うかはわかりませんが、出来ると所まで精一杯やるつもりです。

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先日、テニスの錦織圭選手のコーチ、マイケルチャン氏も基礎訓練の重要性について話していました。選手には何千回と基礎をやらせるそうですが、それを繰り返すことで、出来ないかもしれないとか失敗するかもしれないといった自分への疑いが無くなり、本番で絶対にできるという自信に繋がるのだそうです。これはすごく納得がいきます。練習で一の糸を打てないと、本番でミスしたらどうしようと不安になります。結局、この不安を克服できるまで何千回と一を打つ練習をする、それしかないのです。お稽古の初めと終わりに必ず打つ練習を加えました。すぐに結果は出ませんけど。

 

写真は師匠の手元です。こんな指遣い、撥遣いが出来るまでにはほど遠いのですが、自分のペースでやっていきたいです。しかし、腕が痛い!背中がはる!首がこる!体をほぐすのも同じく必死でやっています。結局、まだ力で無理矢理弾こうとしてしまっているんですね。千里の道も・・・・。焦らず焦らず、でもちょっとは焦らなあかんしな。ほなこれから、お稽古です!!

 

 

 

日本の四季、いろいろ

真っ白なお正月を迎えて、早、三が日も過ぎようとしています。私はこの冬休み、体力作りをしっかりやろうと思いまして、毎日ウォーキングをしてお菓子は一切食べませんでした。お蔭で体が軽い軽い!寒さにも少し強くなったように感じています。テレビもあまり見ませんでした。今日は落語と漫才でちょっと初笑いしましたけど。漫才はテレビでもいいんですけど、落語はやっぱり生がいいですね。なんて思いながら、ティーアップケーシー高峰、暁照雄・光雄なんかを楽しんでいました。彼らの安定感は素晴らしいですね。ステージってやっぱり、ある程度のお決まりが重要なんでしょうか。。

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(我が家の庭にて、元旦。冬生まれの私は寒空に咲く冬の花が好きです。)

 

間もなく小寒ですね。先日テレビで、北野天満宮で「寒げいこ」と男の子が書き初めをしているのを見ました。なぜその言葉を選んだの?と問われて、寒い時にお稽古するからです、と答えていて可愛らしかったです。正にこの時期ならではですね。寒いのに海の中で空手をしたり泳いだり。ご苦労様です。私もお正月中お稽古は欠かさず行っていますよ。今年もコツコツと精進して参ります!

 

 これからまだ大寒を迎えて寒さが厳しくなる時期ですが、それでも既に冬至を過ぎ、日脚は長くなっていきます。少ししたら春が来るのを感じられる、希望のわく頃ですね。七草粥をして鏡開きを済ませたら、本格的にエンジン始動!春の草木も芽吹く準備を始めるでしょう。今年もワクワクしながら楽しんで行きましょう!

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今年も、ありがとうございます!

明日は大晦日。そんなに寒くないので過ごし易いお正月になるのでしょうか。私も今日は地元の神様へお礼参りに伺いました。今年は本当にいい年でした。大きな出会いがいくつかあって、自分自身の蓋を外すことができました。そのきっかけを与えてくれたのが、義太夫三味線の野澤錦糸師匠です。師匠の人間を見抜く目はまっすぐで、こちらも虚飾抜きに師匠と向き合いたいと思いました。師匠の三味線のお稽古を通じて、私は自分自身ともまっすぐに向き合う事を学ばせてもらっています。なかなか見栄や欲を捨てるって難しいですけどね。しかし少なくとも自分に対して嘘はつかない、嫌な部分を直視する事を恐れない姿勢で行きたいです。三味線は一朝一夕では参りません。三味線を構える度に自分の腹と対峙しながら、これからも一歩一歩進んで行こうと思います。

 又、今年は大衆演劇を見られたのも私には大きな出来事でした。中でも、都若丸座長の舞台に出会えたことは財産です。若丸座長の舞台を拝見して、私ももっと人に喜んでもらえるように、仕事でも三味線でも工夫して行きたいと思うようになりました。そうしたら、同じ事をしていても同じではなくて、これまでよりも何倍も仕事もお稽古も楽しくなりました。若丸座長の人を動かす力って凄いなと思います。あのエネルギー、どこから湧いてくるのでしょうか!世界中の人に見てほしい舞台です。

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(一年の締めくくりは華やかに。若丸座長の可憐な女形です。)

 

尊敬する方々に出会えるのって本当に有り難いことです。今年頂いた大切なご縁を育みながら、来年は自分をさらに広げて多くのことに挑戦していきたいです。細々とですが、このブログも続けていきます。読んで下さってありがとうございます。皆様の新年が実り多きものとなりますように。。どうぞ良いお年を、お迎え下さいね!!!

 

義太夫三味線発表会へ向けて 二

気が付けば師走も走る走る、早二週間を過ぎようとしています。急に寒くなりましたね。義太夫発表会へ向けて、先月より補習が開始されました。錦糸師匠はご自身の舞台を勤められた後、私達の指導にあたって下さいます。師匠が本気で私達を教えて下さるので、私達もその気持ちになんとか応えたい、その一心でお稽古に通っています。こんなに熱心に教えて下さる師匠が他にいらっしゃるかなと、本当に有り難いです。苦労していた譜面は、何となく読めるようになってきました。でもやはり、音を聞いて覚える事は大切です。譜面だけで覚えようとすると、音がぶつ切りになってしまいます。師匠も常々、「まとまりで覚えなさい」と仰います。指が思うように動かなくても、チン、トン、テン、と弾くのではなく、テレテツツンと固まりで弾くようにしなさいという事です。師匠の指遣いをしっかりと見て真似をすると、なんとなく弾けたりするんですよね。やはり譜面はさらう時に使うくらいのものでしょうか。

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 さて、義太夫三味線で肝心なのは大夫さんの語りに合わせるという事です。語りがあっての三味線ですからね。しかし語りを聞きながら弾いていたのでは間がずれてしまいます。そう、つまり三味線も大夫と同じように語りを覚えなければなりません。大夫さんが語り易いようにリードしてあげるのが三味線の役割です。無論、そんな事は知ってはいましたけど、、、。実際にやるとなると本当に難しいのです。手数よりも間の取り方を感覚で覚えることに苦労しています。何度も何度もテープを聞きながら一緒に語っている毎日です。しかも語りは物語ですから、演じ分けるという技術がいるわけです。三味線も同じで、子供の喋っている所は優しく、子供でも位の高い若君などは上品な音で。大人でも男女や年齢、位や立場によって弾き方を変えなければなりません。又、大夫さんの息のしんどい所は三味線が上手に引っ張ってあげないと声が続きません。自分の覚えた手を弾くだけでも大変やのに、そんな所まで気なんて配れますかいな!!!舞台に立つ芸人さん達って本当に凄いなって、日々恐れ入っております。

 

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(尊敬する文楽座 野澤錦糸師匠)

 

師匠になんとか最後まで手は付けて頂きましたので、後はひたすら聞き込んで覚えていくという段階です。言うてももう師走も半分が過ぎようとしてますので、ぼやっとしてる間もありません。とは言え、あまり根詰めても体が持ちませんので、ぼちぼち休憩を入れながら。何より楽しんでやることを忘れずに、もう少し頑張りたいと思います。錦糸師匠が時々聞いて下さるんです。「覚えたか?お稽古はどうや?頑張り過ぎなや」と。ざっくばらんで面白い方なんで、私も案外気安くお返事さしてもろてます、「師匠もハイボール飲み過ぎたあきませんよ!」ほな師匠、「偉そうに言うてる師匠の自分が覚えられへん、情けないわ!」まあ、覚えられへんのレベルが私とは格段に違う事は言うまでもないのですが、師匠でも舞台へ上がるまでに見えない苦労をされるのですね。錦糸師匠、一緒に美味しいハイボール、飲みましょうね!!!